最近薪ストーブ設置工事社の方とお話する機会があったのですが、その中で「ロケットストーブ信仰」について話題が上がって非常に興味深かったんでその内容をふまえながらその問題について考えてみたいと思います。
特定のロケットストーブユーザやメーカーを指摘するのではなく、「こんな考えは間違っている」と私が思ったことを書きます。
薪ストーブを導入したい方は薪ストーブとロケットストーブにどんな関係性があるのかも考えていただければ参考になるかと思いますよ!
ロケットストーブ信仰は深く広がっている
「ロケットストーブ信仰」ってなんなんでしょう。私もわかりませんが、一つ言えることがあります。
薪ストーブユーザーの私に「ロケットストーブって良いらしいね」っていう声が聞こえ過ぎる!
そうなんです。せっかくネスターマーティンS43を購入して煙突は口元から断熱二重煙突にしても誰も興味を持ってくれないんです。薪ストーブの性能と煙突の太さに。
だから最近巷でロケットストーブ自作教室などが流行っていることなどを受けてこのように気軽に「ロケットストーブって良いらしいね」って言ってしまうんですよね。
人によっては「ロケットストーブの方が暖かい。使ったことないけど」っていう人もいましたね。
私も即座に反論したいほうなのですがそれは違う。だって薪ストーブもロケットストーブも使ったことない人に何万文字で説明しようとしても聞いてくれませんよね。
ロケットストーブっていう名前の魅力と新鮮さに魅かれて使ってもないのに喧伝してしまうってもう信仰をとおりこして盲信です。
そんな人達を薪ストーブユーザーとしては相手にしなくていいわけなんですが、やっかいなことに鉄工所や金属加工メーカーさんがロケットストーブの原理を利用した薪ストーブを開発し宣伝してしまうんです。
そうなるとやっかいなのがロケットストーブ信仰の増長。
「俺の知り合いの会社がロケットストーブ原理の薪ストーブを開発した。薪山崎もそれにするんだろ?」て3度は言われましたね。
こうなるとやっかいです。私がロケットストーブと薪ストーブの違いを話そうにも困難で、しかも金属加工メーカーさんを非難することになりますから非常にやっかいなんです。
薪ストーブの常識を私が語るのと金属加工メーカーさんの開発された薪ストーブの原理。当たり前のように社長さんの意見が一般的には響いてしまうんですよね。
さらにその薪ストーブは地方経済紙でも紹介されています。薪ストーブの常識を飛び越えてロケットストーブ原理のストーブが京都府北部で優勢になってしまったんです。
これは本当にやっかいだなって思いました。
ロケットストーブの原理を利用した薪ストーブなんて薪ストーブユーザーなら興味すら示しませんよ!
あ、安心してください。
その「ロケットストーブ原理のストーブ」は現在、あるアドバイザーの進言をもとに「本物の薪ストーブ」と生まれ変わって開発販売がなされるようになったんですね。
そのアドバイザーさんが冒頭に書いた薪ストーブ設置工事社の方なんです。
金属加工メーカーさんを説得できるのって凄い。よくぞニセモノの信仰を金属加工メーカーさんから取っ払ってくれた!って感じでしたよ。
それではいよいよロケットストーブの問題点について書いていこうと思います。
ロケットストーブの問題点
- 暖かくない
悲しいかなこれにつきます。尽きてしまうんです。そんじょそこらのロケットストーブでは暖かくない。そうなんです。
以下その理由です。
- 気密性がない
- 口元が小さく、大量の薪をくべられない
- 輻射熱を断熱して「煙突の引き」に変えて捨ててしまっている
- 二次燃焼システムが無い
- 「排気の勢い」を利用して大量の空気を取り入れるため燃焼が速く進む
排気の途中で巨大な蓄熱体でももうけない限り輻射熱による暖かさは期待できません。
また、蓄熱体をもうけたとしても排気エネルギーが失われて本体側に煙が逆流してくることでしょう。
ロケットストーブは野外調理機器くらいの認識が1番正しいと思います。
あ、少ない燃料を大量の空気で燃やしきるために排気部分の温度がすばやく上がりますし、野外調理機器としてはバツグンの性能を持っているといえるでしょうね。
簡易的なロケットストーブを一台持つことは災害への対策として期待できます。
ただ!ですよ。
ロケットストーブを暖房機器として利用するには全くもって薪ストーブにかなわないといってもいいでしょう。
ロケットストーブは薪ストーブで一番大切な輻射熱を排気エネルギーに変えて捨てているんです!
これじゃ暖かいわけがないんです。原理がそうさせているんです。
安心安全高性能なストーブの条件
- 気密性が高い
- 断熱二重煙突である
- 炉内温度の維持と排気のコントロールが可能である
ロケットストーブとは全く対照的なのが高性能薪ストーブの条件であるといえますね。
気密性の高さはそのまま安全性と高性能に直結しています。
扉を閉めているのに火の粉が室内に入ってくるのは問題外です。また、空気の流入量をユーザーが自由にコントロール出来ないのも薪ストーブではありません。さらに、断熱二重煙突が「煙突の引き」を維持する最低限の条件です。
以前は「室内のみ一重で、室外は二重」なんてことがいわれてましたが最近では薪ストーブ口元から二重煙突が常識になりつつあります。私のネスターマーティンは口元から断熱二重煙突ですよ。
断熱二重煙突にするのはロケットストーブが本体を断熱する理由と同じで「煙突の引き」を確保するためです。
空気を絞って最大限の輻射熱を室内側に残そうとするのが薪ストーブですから、煙突に断熱性がないと排気の引きを維持することができません。
ここであえてロケットストーブの名前を出したことには理由がありまして、、、
薪ストーブの煙突がロケットストーブ!
そうなんです。
薪ストーブの煙突部分がロケットストーブなんですよ!
ってことが言いたいんです。
ロケットストーブの原理を考えていただくとわかっていただけますが、ロケットストーブって実は薪ストーブが求める煙突性能のことだったんですよね。
だから、ロケットストーブによっては本体をパーライトなど断熱性能をもつ素材で断熱してしまうんです。
だから、ロケットストーブの排気口から勢いよく炎が上がるんです。
ロケットストーブやその原理が悪いんじゃなくて、薪ストーブは煙突にロケットストーブの性能をすでに利用していた!ってことなんです。
興味深いエピソード
今までの話しとは全く関係がないんですが、薪ストーブ設置工事社の方から興味深いエピソードをうかがったので紹介します。
薪ストーブメーカーAに薪ストーブメーカーBより電話連絡があった。
内容はAの制作する薪ストーブの技術がBの薪ストーブが持つ特許を侵害しているおそれがあるという内容だった。
Aの担当者は「うちの薪ストーブはロケットストーブをもとにつくられていますが問題があるでしょうか?」と返事をした。
その瞬間、Bの担当者は電話を切ってしまった。
というものです。
そうなんですよ。B社からみればA社が作っているのは乱暴に言えば「煙突」で「高性能薪ストーブ」ではないという認識です。
高性能薪ストーブを目指していないのであれば特許を侵害していようが邪魔にならない。そういうことなんですよね。
おわりに
今回薪ストーブ設置工事社の方からお話を伺うことで今一度薪ストーブについて考えることができました。自分の薪ストーブシステムについてもさらに理解することができてひじょうによい機会になりました。
薪ストーブユーザーの方、薪ストーブを購入予定の方、薪ストーブにあこがれる方はいずれの方も「薪ストーブとは?」ということについてしっかり勉強してください。
もしくは、薪ストーブについてじっくり説明しようとしてくれる業者さんを選んでくださいね。
薪ストーブで安心安全暖かな生活を望んでいる方は「ロケットストーブの原理云々を口にする業者」とはお付き合いなさらないことを願いますよ。
ロケットストーブはロケットストーブ。安心安全高性能な薪ストーブとは別物だということを念頭に置いておけば大きく外すことはないと思います。
みなさんが素敵な薪ストーブライフを過ごせますように…
以上です!
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