寂しがりやの自称一人好きには危険なアイテム
というのも、今から思えば自分自身がそうだった。
寂しがりやのくせに一人でいることを好み、場合によってはそれを他人に言ってしまうような人。それが20年前の自分。
一浪してやっとこさ合格した関西学院大学。
受かったものの、”大学に行って勉強したい”なんて考えはほとんどなく、ただただモラトリアムを延長したいって想いが強かった。そんな考えの人間にモラトリアムなど楽しめるはずもなく、仲の良い友達は出来たもののやっぱり取り残されていってしまう。
軽音サークルに所属はしていた。が、自ら進んでバンドを組み積極的に活動しようとせず、楽しいはずなのに”ここじゃない!”なんて生意気なことを胸にしているようなどうしようもなさ。当然時間だけが過ぎてゆく。
そんなときに出会ったのがこのアルバム『niandra lades and usually just a t-shirt』なんだ。
レッドホットチリペッパーズの三代目ギタリストであるジョン・フルシャンテが1994年に発表した。
一曲目「As Can Be」から”意外にキャッチー”なのがやっかいなんだな。
そう。このアルバムは出音はアナログで粗雑なんだけれどもメロディーはキャッチーだから耳に残ってしまう。アルバムの前半はジョンのボーカル付きの曲で後半はインストなんだけど、インストすらキャッチーだから大変。
厨二病を延長させたような自分にとっては至極厄介なアルバムと出会ったわけです。
そこそこアングラ
そうなんです。厄介な理由は実はここにある。
レッドホットチリペッパーズを知っている人は多い。
めっちゃメジャーなバンドなんですね。
それに対し、そのギタリストのソロアルバムを追いかけているような人はグッと少なくなる。少なくなるとはいえ、メジャーバンドのギタリストだけあって世界に流通させることが可能だ。
ちょと音楽をかじったことのある人で、レッドホットチリペッパーズにはまった人(ギター小僧)ならジョンのソロアルバムの存在は知っているはずです。
ただ、買うかどうかは別問題。
気にいるかどうかは別問題。
だって、”そこそこアングラ”なアルバムだからなんです。
アングラってなにかって話は置いとく。
何が言いたいのかというと、アングラって言葉に引っかかるような「若くて、厨二っぽくて、何かをこじらせた」自分のような人にとっては危険だってことなんです。
- マン・レイ
- マルセル・デュシャン
- アンドレ・マッソン
- ピカソ
- ダリ
- 1920年代
- エログロナンセンス
などなどをなんととなく知り、レッドホットチリペッパーズ的な現代メジャーバンドも聞きつつ、なんとなくそのメジャーさ加減をバカにしたいような気にかられた人間のうち、その表面的な見た目のみに惹かれていったような者を一瞬にして虜にしてしまうのがこのアルバムの持つ力といっていいように思うんだ。
効能
効きすぎるほどに効きました。
酒にベロンベロンに酔いながら聞き、涙を流していました。
今思えば恥ずかしい記憶なんだけれども。
- これさえ聞いときゃ満足
- 居酒屋などでもイヤホンで聞きながら呑む
- 常に頭の中で流している
- ボリュームを大きくして聞く
なんて毎日が続きました。
また、このような聞き方が一番危険だったと思い出します。
この頃(大学3年くらい)から学校に行くのが億劫になり、昼間は寝て夜はこのアルバムを聞きながら大阪の下町に飲みに行く。
大阪の下町に飲みに行くってどういうことかというと、これも文字にするのがめっちゃ恥ずかしいんだけど、”アングラを求める俺”に陶酔するためだったんだなー。
あかんあかん。
大事な就職活動費も飲み代に消える始末でどうしようもなくなったことも何度か。
このアルバムに出会わなければ俺ももっと良い大学生活を過ごせたんじゃないかって思う。いや、間違いなくそうだったと思うんだ。
ジョン・フルシャンテのソロアルバムなんてほんと聞くもんじゃないよって思うわ。
音楽好きな若者に伝えたいこと
こんなしょうもないアルバムについて検索している暇があったらもっと違うものを探せってことを言いたい。
金が無いから音楽を聞くなんてことが一番の愚行だっていうことを知ってほしい。
音楽って金がかからないからあかんのよ。
その中でもあかんのがこのアルバムだってことよ。アナログ4トラックでシコシコ録音されたジャ○キーの曲なんてアナタにいい影響を与えるはずもないってことを一番にわかってほしい。
そうだな、こんなアルバムに興味を持つんならマン・レイなどの作品集や著作を読んでみ?
ハッキリ言ってわけがわからんよ?
面白くもなく、綺麗でもないよ?
アングラな雰囲気に興味を持って”そこそこにアングラ”なこのアルバムを手に取ったのならその源泉をまずは体験した方が良いんじゃ無いかってこと。
まったくわからんから!つまらんから!
ジョンのアルバムのほうがよっぽどキャッチーだし、何より美しい。
1920年代の芸術作品よりジョンのほうがメロディアスで綺麗だってこともわかってほしんだ!
2019年の今、自分も家族を持ち、薪ストーブなんてものに興味を持ったおかげでジョンのアルバムをイヤホン大音量で聴き込むなんてことは全くしなくなった。
そうだ若者よ、結婚しろ!
結婚したら寂しくなくなる分、音楽に助けを求めるなんてことはしなくなる。
そうだ、学生時代の俺にも伝えたい。
結婚しろ、と。
と書いたところで、学生時代に『niandra lades and usually just a t-shirt』を聞いたら”めっちゃハマった”ってことを思い出しましたよ。
アナタも聞いてみて。
美しい曲が詰まりまくったアルバムだから!